完成したのにも関わらず発売未定のボックス・セット『Feel Flows』

 昨年の末頃から、ビーチ・ボーイズの「Sunflower」~「Surf's Up」期(1969-71)年の音源を集めたボックス・セット「Feel Flows」が製作されているとの情報が出回りはじめました。

 昨年12月の季刊ファン誌「Endless Summer Quarterly」の記事では、アル・ジャーディンとブルース・ジョンストンが5枚組のボックス・セット「Feel Flows」の制作について触れたことが述べられています。今年の2月には、Youtubeのライブ配信で、ビーチ・ボーイズサウンドエンジニアであるマーク・リネットが、"San Miguel"などの曲を再生しつつ、「Feel Flows」について「秋頃の発売を望んでいる」と述べました。

  

 このボックス・セットの製作の進捗状況は長らく不明でしたが、先月に入って少しずつ情報が入ってきました。2017年の「Sunshine Tomorrow」のライナーノーツを執筆したHowie Edelsonは、今年6月20日の掲示板の投稿で、「Feel Flows」のライナーノーツのためにブルース・ジョンストンやブライアン・ウィルソンにインタビューを行ったことを明らかにし、7月28日には、収録曲の選定、ライナーノーツ、アートワーク、ミキシング、マスタリング全てが完了したと述べています。(なお、6月10日にはEndless Summer Quarterlyが「ある大ニュースがもうすぐ発表される」とFacebookに投稿しましたが、この投稿は「Feel Flows」とは関係がなかったことが、Howieによって明言されています。)

 

 しかし、昨日30日、現時点で「Feel Flows」を発売する予定がないことHowieによって明らかにされました:

(前略) (このボックス・セットは)間違いなく存在します。間違いなく完成しています。そして、間違いなく「Feel Flows」という名称です。

アル・ジャーディンとブルース・ジョンストンの二人とも公の場で「Feel Flows」について話しています。

マーク・リネット、アラン・ボイドと私は二年かけて「Feel Flows」の製作に取り組みました。(中略) 私は、レーベルに「Feel Flows」の発売の許可を出させ、二度も企画中止の危機から救いました。(中略)「Feel Flows」の発売は現時点で計画されていません。

(引用者訳)

 

 この情報を受けて、現在ファンは失望と混乱に包まれています。Redditでは有志が「Feel Flows」の発売をビーチ・ボーイズのメンバー、マーク・リネットおよびキャピトル・レコードに対して求める署名活動をchange.orgで開始し、現在200人ほどの署名が集まっています。リンクは以下のとおりです:

www.change.org

 

 

どうして発売できないのか

 Howieの「発売は現時点で計画されていない」という投稿が何を意味するかは、ファンの間で解釈が分かれています。一つは、「Feel Flows」の発売はキャンセルされたという解釈、もう一つは、「Feel Flows」の発売はキャンセルされていないものの、何らかの事情により発売日を決められずにいるとの解釈です。

 

 さらに、どのような理由で「発売は現時点で計画されていない」のかについても、諸説紛糾しています。

 現在の情勢から最も容易に想像できる理由は、新型コロナウイルスの世界的流行による影響により、生産やマーケティングに支障が生じている可能性でしょう。

 しかし、Howieは7月14日に「パッケージ(生産)の遅れは、発売が遅れている理由ではない」と述べています。 更に、「The Beach Boys FAQ - All That's Left To Know About America's Band」や「Dennis Wilson: The Real Beach Boy」といった書籍の著者であるJon Stebbinsは、掲示板の投稿コロナウイルスマーケティングの問題、あるいはレーベルの都合によって発売が遅れている可能性を否定し、ビーチ・ボーイズのメンバー自身が発売の遅れの原因であることを示唆しています。

 一方で、Super Deluxe Editionというサイトには、Bruce Kelsoという人物が、この時期のビーチ・ボーイズには外部の人物が作曲に関わっているケースが多いため、収録される楽曲の権利に関する法的な問題が生じていると投稿しています。

 

もし発売されなかったら?

 それでは、「Feel Flows」が今年中に発売されなかった場合、あるいは万一キャンセルされてしまった場合、収録される予定の音源はどうなるでしょうか?

 まず、発売が来年に先送りされた場合は、昨年の「The Beach Boys 1969: I'm Going Your Way」と同様に、EU著作権法によってレコード会社の権利保持のために50年以内に発表する必要のある、1970年に録音された未発表曲・コンサートが今年末に発表されると予想されます。具体的には、"Seasons in the Sun" "Big Sur" "My Solution"などの未発表曲、および1970年10月13日のBig Sur Folk Festivalで録音されたコンサートです。

 加えて、1970年にブライアン・ウィルソンがFred Vailのためにプロデュースしたカントリーのカバーアルバム「Cows in the Pasture」からも、録音された15曲のうち1曲が「Feel Flows」に収録される可能性があることが、昨年末にYoutubeで発表されたビデオでFred自身により明らかにされています。昨年このアルバムのミキシング作業が行われており、著作権上の事情を考慮すると、マリー・ウィルソンの「The Break Away EP」を昨年発売したOmnivoreのようなレーベルから年内に発売される可能性があります。

 

 また、万一発売がキャンセルされてしまった場合は、今年及び来年の年末に発売される著作権対策リリースに、「Feel Flows」のために用意された音源が流用されることが予想されます。その場合、2018年の「Wake the World」「I Can Hear Music」のように、まとまった分量の音源が収録されるかもしれません。

 

 

 現在かなり情報が錯綜しており、「Feel Flows」の発売がいつになるか、正式発表はいつ行われるか、あるいはそもそも発売されるかどうかはっきりしていない状況です。いちファンとしては、発売の妨げとなっている原因ができるだけ早く解決され、「Sunflower」「Surf's Up」というビーチ・ボーイズの歴史のなかでも重要な時期の貴重な音源が、無事にファンの手元に届くことをただただ祈るばかりです。

 

 

【サンフラワー】ビーチボーイズ・1969年の著作権対策リリース 収録曲予測🤠

(2019/9/9 一部修正) 

 こんにちは。ビーチ・ボーイズのファンになって以来、一年の中で最も楽しみな月が12月になったWataです。

 さて、著作権対策リリースの季節が近づいて参りました。ビーチ・ボーイズも、例年のように50年前の未発表音源をまとめて発売すると予想されます。マーク・リネットが掲示板に「これからの発表に乞うご期待」と投稿したため、ファンの期待も高まっていますが(「これからの発表」が何を指すかは未だ不明です)、今年はどんなものが出るのでしょうか?

  まず、1969年に録音されたアルバムは「Sunflower」ですが、このアルバムの録音は翌年の1970年にも行われているので、アルバムの収録曲でまとめる(=1970年録音の音源も収録)、もしくは録音年別でまとめる(=1969年の録音のみ収録)の両方の場合が考えられますが、これまでのビーチ・ボーイズ著作権対策リリースは全て後者だったので、ひとまず1969年の録音曲のみで考えてみましょう。

 

1969年に録音された曲は?

 まず、1969年に録音された曲とそれらの発表状況を整理してみます。

楽曲 発表/未発表の状況
Forever Sunflower(1970)
San Miguel Ten Years of Harmony(1981)
Got to Know the Woman Sunflower(1970)、 1970/6/19に編集されたアルバム"Reverberation*1"用のモノ・ミックスは未発表
Deirdre Sunflower(1970)
What Can the Matter Be 未発表*2
Celebrate the News シングル(1969)
Loop De Loop Endless Harmony Soundtrack(1998)、 オリジナル・ミックス(ファルセット入り)は未発表
All I Wanna Do Sunflower(1970)
Break Away シングル(1969)
Slip On Through Sunflower(1970)
I'm Going Your Way (California Slide) 未発表*3
Cotton Fields (シングル・バージョン) シングル(1970)
Soulful Old Man Sunshine Endless Harmony Soundtrack(1998)
Walkin' I Can Hear Music: the 20/20 Sessions(2018)
Games Two Can Play Good Vibrations: 30 Years of the Beach Boys(1993)
Add Some Music to Your Day Sunflower(1970)
When Girls Get Together Keepin' The Summer Alive(1980),、オリジナル・ミックス及び"Reverberation"用のカラオケ・ミックスは未発表
Our Sweet Love Sunflower(1970)(ストリングスのみ1970年録音)
Til' I Die (デモ) 未発表*4
Raspberries, Strawberries  未発表*5
This Whole World Sunflower(1970)
Tears in the Morning Sunflower(1970) (ストリングスと曲の終わりのピアノのみ1970年録音)
Where Is She? Made in California(2013)
Dennis' Piano Interlude (= (Wouldn't It Be Nice to) Live Again (デモ)) 未発表
Susie Cincinatti シングル(1970,74)、15 Big Ones(1976)
Back Home Made in California(2013)、デモ(1970/1/18録音)は未発表
Lady (Fallin' In Love) Summer Love Songs(2009)、シングル・ミックス(1970年にDennis Wilson & The Lamoboとして発売)は公式ではCD未発売(ストリングスのみ1970年録音)
Carnival (=Over the Waves) 未発表

 ※傍線の曲に関しては、1970年にも録音が行われました。

 28曲と、アルバムを2枚発売してもまだ余るほどの曲を録音しており、この時期のビーチ・ボーイズの創作意欲が充実していたことが伝わってきます。

 

 

発売される可能性の高い楽曲

次に、具体的にどんな楽曲が発売されそうかまとめてみます。

- What Can The Matter Be?

- I'm Going Your Way (California Slide

- Til' I Die (ピアノ・デモ)

 

- Raspberries, Strawberries (At My Windowの初期バージョン)

 

- Wouldn't It Be Nice to Live Again (ピアノ・デモ)

 

- Forever (歌詞が別のバージョン) *6

 

- Loop De Loop (いわゆる「Landlocked」(2nd Brother Album)に収録されている、ファルセットで歌われている初期ミックス)

 

- When Girls Get Together (「Landlocked」収録の初期ミックス)

 

この他、上記の表の発表済み楽曲のうち、それぞれの曲のカラオケ/アカペラミックス*7や、アルバム未収録のもの(具体的には"San Miguel", "Break Away", "Celebrate The News", "Soulful Old Man Sunshine", "Cotton Fields", "Games Two Can Play", "Where Is She?")の新ミックスが収録される可能性は高いと思われます。

 

 

 

 

 

発表されるかもしれない楽曲

 加えて、(1969年中に全てが録音されたかどうかわからないなどの理由で)断言はできないけれども、収録される可能性がある曲は以下のとおりです:

 

- Add Some Music to Your Day (歌詞が異なる初期バージョン)

 

- This Whole World (ボーカルが異なるロング・バージョン) *8

 

- Tears in the Morning (ボーカルが異なる初期バージョン)

 

- Lady (Fallin' In Love) (1970年に"Dennis Wilson & Rambo"名義で発売され、いわゆる「Landlocked」にも収録されているオリジナル・バージョン -「Summer Love Songs」に収録されているものと異なり、冒頭のストリングスが入っていない)

 

- Time To Get Alone (アカペラ・ミックスの修正版) *9

 

- Carnival (Over The Waves)

 

- スティーブン・カリニッチとブライアンが制作した詩の朗読アルバム「A World of Peace Must Come」用のバック・トラック

 

 

 

まとめ

こうして全体を見てみると、昨年に比べて完全な未発表曲は少なめですが、まとまった編集盤を製作するのに十分な楽曲があることがわかります。(残念ながら、1969年のコンサート音源は、正式のものは一切残っていないそうです)

 

更に、まだ知られていない未発表音源が今回初めて収録されるかもしれません。例えば、昨年の場合、"Be Here in the Morning Darling", "Rock & Roll Woman", "Well You Know I Knew", "Is It True What They Say About Dixie?"などは発売の一週間ほど前まで存在そのものが知られていませんでした。

 

今年のリリースで、「Sunflower」の製作の過程に新たな光が当てられることになるでしょう。

 

…と、いろいろと述べてきましたが、実際に発売される確証は未だありません。

 

また、仮に今年は無事に発売されたとしても、来年以降も継続される保証はありません。昨年発売された「Wake the World」「I Can Hear Music」の公式によるプロモーションがほぼ皆無であったことからも分かる通り、権利を所有しているキャピトル/UMGはこれらの著作権対策リリースに総じて冷淡です。

 

それでは、これらのリリースを続けてもらうために、私たちファンには何ができるでしょうか――身も蓋もない話ですが、発売されたものを購入することが一番の支援になります。実は、アラン・ボイドも昨年12月に以下のように話しています:

 

そもそも、このようなとても専門的でニッチな企画を実現するために、レコード会社の支援を取り付けることが、とても困難になってきています。(中略) 皆さんもお気づきかもしれませんが、今年のリリースのプロモーションが一切なかったことに、少し傷ついています。これらの企画に注がれた労力を評価していただける皆さんに、アルバムの購入という方法で支えていただき、このようなビーチ・ボーイズアーカイブ・リリースの市場が存在することを、ユニバーサル・ミュージックに証明していただきたいと、私たちは望み、祈っています。(中略) 私たちは、得ることのできるあらゆる支援を必要としています。

 

(出典:

 

http://smileysmile.net/board/index.php/topic,26268.msg644965.html#msg644965)

 

 レコード会社が、ビーチ・ボーイズの未発表音源を発売することによって得られる利益よりも、発売に必要な費用のほうが高くつく――つまり、割りに合わないと判断したら、おそらく、こうしたリリースはなくなってしまいます。ですから、著作権対策リリースが続いてほしいと思われる方(で、財布に余裕のある方)は、ぜひ、今からでも「Wake the World」や「I Can Hear Music」を購入してください。そして、今年のリリースが発売された際は、そちらもご購入いただければ、きっとマークやアランも喜ぶと思います。

 

 

 

参考資料:

 

Bellagio 10452: http://bellagio10452.com/index.html

- Til' I Die (ピアノ・デモ)

- Raspberries, Strawberries (At My Windowの初期バージョン)

- Wouldn't It Be Nice to Live Again (ピアノ・デモ)

- Forever (歌詞が別のバージョン) *10

Loop De Loop (いわゆる「Landlocked」(2nd Brother Album)に収録されている、ファルセットで歌われている初期ミックス)

-  When Girls Get Together (「Landlocked」収録の初期ミックス)

この他、上記の表の発表済み楽曲のうち、それぞれの曲のカラオケ/アカペラミックス*11や、アルバム未収録のもの(具体的には"San Miguel", "Break Away", "Celebrate The News", "Soulful Old Man Sunshine", "Cotton Fields", "Games Two Can Play", "Where Is She?")の新ミックスが収録される可能性は高いと思われます。

 

 

発表されるかもしれない楽曲

 加えて、(1969年中に全てが録音されたかどうかわからないなどの理由で)断言はできないけれども、収録される可能性がある曲は以下のとおりです:

- Add Some Music to Your Day (歌詞が異なる初期バージョン)

- This Whole World (ボーカルが異なるロング・バージョン) *12

- Tears in the Morning (ボーカルが異なる初期バージョン)

- Lady (Fallin' In Love) (1970年に"Dennis Wilson & Rambo"名義で発売され、いわゆる「Landlocked」にも収録されているオリジナル・バージョン -「Summer Love Songs」に収録されているものと異なり、冒頭のストリングスが入っていない)

- Time To Get Alone (アカペラ・ミックスの修正版) *13

- Carnival (Over The Waves)

- スティーブン・カリニッチとブライアンが制作した詩の朗読アルバム「A World of Peace Must Come」用のバック・トラック

 

まとめ

こうして全体を見てみると、昨年に比べて完全な未発表曲は少なめですが、まとまった編集盤を製作するのに十分な楽曲があることがわかります。(残念ながら、1969年のコンサート音源は、正式のものは一切残っていないそうです)

更に、まだ知られていない未発表音源が今回初めて収録されるかもしれません。例えば、昨年の場合、"Be Here in the Morning Darling", "Rock & Roll Woman", "Well You Know I Knew", "Is It True What They Say About Dixie?"などは発売の一週間ほど前まで存在そのものが知られていませんでした。

今年のリリースで、「Sunflower」の製作の過程に新たな光が当てられることになるでしょう。

…と、いろいろと述べてきましたが、実際に発売される確証は未だありません。

また、仮に今年は無事に発売されたとしても、来年以降も継続される保証はありません。昨年発売された「Wake the World」「I Can Hear Music」の公式によるプロモーションがほぼ皆無であったことからも分かる通り、権利を所有しているキャピトル/UMGはこれらの著作権対策リリースに総じて冷淡です。

それでは、これらのリリースを続けてもらうために、私たちファンには何ができるでしょうか――身も蓋もない話ですが、発売されたものを購入することが一番の支援になります。実は、アラン・ボイドも昨年12月に以下のように話しています:

そもそも、このようなとても専門的でニッチな企画を実現するために、レコード会社の支援を取り付けることが、とても困難になってきています。(中略) 皆さんもお気づきかもしれませんが、今年のリリースのプロモーションが一切なかったことに、少し傷ついています。これらの企画に注がれた労力を評価していただける皆さんに、アルバムの購入という方法で支えていただき、このようなビーチ・ボーイズアーカイブ・リリースの市場が存在することを、ユニバーサル・ミュージックに証明していただきたいと、私たちは望み、祈っています。(中略) 私たちは、得ることのできるあらゆる支援を必要としています。

(出典:

http://smileysmile.net/board/index.php/topic,26268.msg644965.html#msg644965)

 レコード会社が、ビーチ・ボーイズの未発表音源を発売することによって得られる利益よりも、発売に必要な費用のほうが高くつく――つまり、割りに合わないと判断したら、おそらく、こうしたリリースはなくなってしまいます。ですから、著作権対策リリースが続いてほしいと思われる方(で、財布に余裕のある方)は、ぜひ、今からでも「Wake the World」や「I Can Hear Music」を購入してください。そして、今年のリリースが発売された際は、そちらもご購入いただければ、きっとマークやアランも喜ぶと思います。

 

参考資料:

Bellagio 10452: http://bellagio10452.com/index.html

*1:キャピトルでの最後のアルバムとして計画されましたが発表に至らず、代わりに「Live In London」が発売されました。詳細はこちら

*2:デニスの曲とされることが多いですが、こちらのCraig Slowinski氏(Endless Summer Quarterly)の書き込みによると、誰が作曲したかは不明で、録音にはブライアン以外全員が参加しているとのことです。

*3:デニスの曲で、ブート化されています。

*4:ピアノデモで、歌は入っていないとされています

*5:キングストン・トリオの曲のカバーで、後に"At My Window"になりました。

*6:マーク・リネット&アラン・ボイドとのQ&A@Discord [パート2] - Busy Doin' Somethin')のアラン・ボイドの発言より:「それと、「Forever」の初期のデモはありませんが、歌詞の一部とボーカルが異なる別ミックスがあります。」)

 

- This Whole World (イースタン航空の1970年のCM用に作られた、終わり方が異なる別バージョン)((同記事のアラン・ボイドの発言より: 「また、1970年にイースタン航空のCMのために製作された、「This Whole World」の終わり方の異なるバージョンがあります。割と良いですよ。」

*7:同インタビューのアラン・ボイドの発言より: 「けれども、できれば全曲のアカペラとインストを収録したいと思っています。特に『Sunflower』ではそうしたいです。」

*8:2000年頃に、「Sunflower」のCD再発に際してのボーナス・トラックの一つとして提案されたといわれていますが、未だ未発表です。参考:

 

FRIDAY NIGHT BOYS: The Beach Boys - Brother Re-Issues Bonus Tracks...

 

*9:昨年発売された「I Can Hear Music」に収録されたものですが、Aメロのバック・ボーカルが一部欠落していたので、アラン・ボイドがいつか修正版を出したいと述べています。

*10:マーク・リネット&アラン・ボイドとのQ&A@Discord [パート2] - Busy Doin' Somethin')のアラン・ボイドの発言より:「それと、「Forever」の初期のデモはありませんが、歌詞の一部とボーカルが異なる別ミックスがあります。」)

- This Whole World (イースタン航空の1970年のCM用に作られた、終わり方が異なる別バージョン)((同記事のアラン・ボイドの発言より: 「また、1970年にイースタン航空のCMのために製作された、「This Whole World」の終わり方の異なるバージョンがあります。割と良いですよ。」

*11:同インタビューのアラン・ボイドの発言より: 「けれども、できれば全曲のアカペラとインストを収録したいと思っています。特に『Sunflower』ではそうしたいです。」

*12:2000年頃に、「Sunflower」のCD再発に際してのボーナス・トラックの一つとして提案されたといわれていますが、未だ未発表です。参考:

FRIDAY NIGHT BOYS: The Beach Boys - Brother Re-Issues Bonus Tracks...

*13:昨年発売された「I Can Hear Music」に収録されたものですが、Aメロのバック・ボーカルが一部欠落していたので、アラン・ボイドがいつか修正版を出したいと述べています。

マーク・リネット&アラン・ボイドとのQ&A@Discord [パート2]

(先月のこの記事の続きです。)

 

 

―マークに質問ですが、ブライアンの監修で『Pet Sounds』のステレオ・リミックスに携わったのはどのような感じだったのですか?なにか興味深い逸話はありますか?

それと、『Smiley Smile』をステレオにリミックスするのはどうでしたか?モノ・ミックスと比べて、何か新しい発見はありましたか?

マーク: 1990年代当時は、私がミックスした後にブライアンがスタジオに来て、指示を出しました。『Pet Sounds』に関しては、ミックス作業中に私が参照できるモノ・ミックスがあったので、ブライアンから変更を指示されることはあまりありませんでした。

『Smiley Smile』についての発見といえば、1" 8トラックまで立ち戻ることで音質を向上できたことです。15年ほど前に、オリジナルのモノ・ミックスが、実はフェード・アウトやその他の編集を加えるために複製されたもので、元となるミックスに比べて音質が明らかに劣っていることが判明しました。(2012年にはじめて発売された)ステレオ・ミックスでは、モノでは分からなかった細かい部分まで聞けるようになっていると思います。

 

―ブライアンに自分のミックスを聞かせるときには、きっと興奮したことと思います。

マーク: ブライアンや他のメンバーが素晴らしい仕事をしたからこそ、このようなミックスができたんです。

アラン: 『Smiley Smile』のステレオ・ミックスはお気に入りの仕事の一つでした。オリジナルのモノ・ミックスは未完成で(いくつかの曲にはフェード処理がされていませんでした)、アルバムの出来に多少影響を与えていましたし、テープの切り貼りが多く、とてももろい状態でした。それで、アルバムの生産に使われたモノのマスター・テープは元のセッション・マスターから一段階離れたものでした。

 

 

―1968年のセットに収録された音源は、以前から大半の存在を知っていたのか、それとも、今回調査して新たに見つかったものもあるのですか?「Be Here In The Morning Darling」と「Well You Know I Knew」は、だれもその存在を知らなかったので、みんなが度肝を抜かれましたが、もしかして、お二人は以前からその存在を把握していたのですか?

アラン: 過去15年間以上にわたり行っている保存作業の過程で、既にほとんど全ての未発表曲について把握していました。リールの保存作業を行うたびに、大まかな参考ミックスを作ってライブラリに追加しているので、内容はデータベースに記録されています。

マーク: どのテープからも、素晴らしいものが見つかっています。それに、ほとんどの調査と音源の移し替えが終わっているので、(今回のセット)のようなプロジェクトをまとめるのも割とすぐにできます。

 

 

―『Adult Child』*1についての考えを教えてください。現在まで未発表であること、それと将来の発売の可能性についてどう思いますか?

アラン: 『Adult Child』はビーチ・ボーイズにとって逆境の時期に製作され、収録曲もかなり奇妙な曲が多いので、当時却下されてしまったのは不思議ではないと思います。けれども、発売されるべきだと思います!

 

 

―「Lazy Lizzie」*2という曲にはまっているのですが、この別バージョンはどれくらいありますか?デモや別テイク、ブートにないオーバーダブなどはありますか?

アラン:  『Holland』(の付属EPに)収録されている「Better Get Back In Bed」の未編集の完全版に、「Lazy Lizzie」のAメロと同じメロディーのピアノの演奏が入っています。それ以外は、ブートのミックスがマルチテープの内容とほぼ同じものです。

 

―「Pa Let Her Go Out」という題名の、「Better Get Back In Bed」のボーカル入りの別バージョンがあるというのは本当ですか?

アラン: ええ、本当です!"Pa let her, pa let her go out/ such a good looking prince"という歌詞です。『Mt. Vernon & Fairway』のリールにはいろいろと興味深いものが入っています。『Holland』のボックス・セットもぜひやりたいですね。

 

 

―『I Can Hear Music : The 20/20 Sessions』で気に入ったのが、デニスが歌う「All I Want To Do」の別バージョンでした。デニスとお友達の女性の「バック・ボーカル」*3の話はとても有名ですが、この話と、謎の女性の正体について、なにか情報はありますか?

アラン: デニスの効果音のリールですか…女性が誰かについては全くわからないです。

マーク: ずっと前にスティーブン・デスパ―が「All I Want To Do」のフェードの録音についてインタビューで答えていましたよ。*4 「本物」らしさを保つため、新しいミックスには別の部分を加えておきました。

 

 

―もし今回発売されたセッション音源を用いて『Friends』と『20/20』を作り直すとしたら、どのような曲順になりますか?

アラン: 『Friends』と『20/20』の曲順については考えさせてください…個人的には、そのままの方が好きです。『20/20』のB面はまさに音の旅だと思います。

マーク: 曲順については、今回のセットでオリジナルと同じ曲順に別ミックスを並べて聞いてみて、とても良かったので、元の曲順はうまく出来ていると思います。

 

 

―「Good Timin'」にミスがあったため、『Light Album』の2015年のハイレゾ・リマスターはほとんどのサイトから取り下げられてしまったのですが、キャピトルが代わりを作っていないので、iTunesを除く大半のサイトで未掲載のままとなっています。

 それで思ったのですが、数年前に出たエルビス・プレスリーのボックス・セット(最初からリマスターし直した音源が、オリジナルのジャケットとともにボーナス・トラック付きで収録された)のようなものが、(できればマークの新しいリマスターで)キャピトルから今後発売される可能性はありますか?

アラン: 『Light Album』のハイレゾですか?それはCDで出たんですか?

マーク: わからないです。確かにキャピトルに提案することはできますが、つい最近再発されたばかりなので、キャピトルがどれくらいの需要を想定するか見当がつきません。キャピトルは『Light Album』をレコードでも再発したと思います。

 

 

『Brian Wilson's Secret Bedroom Tapes』という記事に、カメラマンのエド・ローチが、ブライアンがマリー・ウィルソンと録音した第二のおとぎ話*5のカセット・テープを持っていると書いてありましたが、本当ですか?

アラン: あの記事は頭痛の種でしたね…私はそのカセットを実際に聞いたことはないです…必ずしも存在しないというわけではないのですが、聞いたことはありません。

 

 

―『I Can Hear Music』に収録された「Been Way Too Long」のうち、1968年に録音されたパートの順番は分かっていますか?

マーク: 「Been Way Too Long」は私とアランが録音された全てのパートを、聴きやすさを第一に考えてまとめたものです。1968年に曲がまとめられた痕跡はありません。

アラン: ほとんどのパートの録音日は判明しています。もしかすると、いつか「Been Way Too Long」のどのセッションがどの順番だったかを見極めるためにデータベースと参考ミックスに立ち戻ってみるかもしれません。今回に関しては、これまで知られていなかったパートを収録することと、聴きやすいように編集することを主に心がけました。

 

 

―『Sunflower』の蔵出しリリースに収録される可能性のある音源で、私たちが驚くと思うものはありますか?また、「Shortenin' Bread」の録音の中で、特筆すべき知られていないものはありますか。

アラン: ほとんどの『Sunflower』の音源はどこかの時点でブート化されていますし、私たちも『Made In California』にいくつか素晴らしい曲を収録しました。けれども、個人的には「All I Wanna Do」を「分解」するのが楽しみです。それと、「Forever」の初期のデモはありませんが、歌詞の一部とボーカルが異なる別ミックスがあります。また、1970年にイースタン航空のCMのために製作された、「This Whole World」の終わり方の異なるバージョンがあります。割と良いですよ。

1974年から75年頃に録音された複数のブライアンのジャム・セッションで、「Shortenin' Bread」のリフを使ったものがありますが、ボーカル入りのものはないです。

 

 

―「I've Got A Friend」(デニスの未発表曲)の高音質のサウンドボード録音はありますか?

アラン: 残念ながら、「I've Got A Friend」にはとても簡単なバック・トラックしか残っておらず、ライブ・バージョンもないです。

 

 

―数年前に出回ったドン・ゴールドバーグの録音*6について詳しく知っていますか?

アラン: 実は数年前にドン・ゴールドバーグがスタジオに来ました。感じのいい人でした。「Sweet And Bitter」で彼がしたことは本当に気に入っています。「Sweet And Bitter」のベーシック・トラックは私たちの手元にありますが、マイクのボーカルの入ったテープはまだドンが持っています。

 

 

―「Time To Get Alone」のアカペラで、Aメロのバック・ボーカルがないのには何か理由があるのですか?それと、「Time To Get Alone」の歌詞をいつ誰がなぜ変えたのか分かる録音は残っていますか?

アラン: 「Time To Get Alone」のバック・ボーカルの一部が抜け落ちているのには、特段の事情があるわけではなく、短いスケジュールと締切に追われての、「やっちまった」というようなミスでした。それに、抜け落ちてしまったパートが単体で収められているのは初期のマルチテープだけ(最終版のマルチ・テープではインストと一緒に入っています)ので、簡単に見落としてしまいました。いつか可能な時に修正版を出したいと思っています。すみません。

マーク:同感です。修正版は完成しているので、将来どこかに収録したいと思います。

 

 

―映画『Love & Mercy』で1960年代のブライアンを演じたポール・ダノはどんな感じでしたか?

マーク: ポールは一緒に仕事をするのに素晴らしい相手でした。本当に感じがよくて、それに、彼はブライアンの役で演奏や歌もできたので、映画の出来に大きく貢献していたと思います。また、映画の中で、(60年代の)ビーチ・ボーイズの録音に不可欠だった存在で、私の憧れの人でもあるチャック・ブリッツ*7の役を演じたのは、素晴らしい経験でした。

 

 

―映画スターですね!

マーク: レコーディング・エンジニアの役に実際のレコーディング・エンジニアを割り当てる…理にかなっていますね。映画のスタッフはスタジオの場面を本物らしくするために労力を惜しみませんでした。映画のメイキングのドキュメンタリーを作れたらよかったなと思います。セット担当がウェスタンの第3スタジオを1966年当時のまま再現した仕事は素晴らしかったです。

 

 

―本当にその通りで、「Good Vibrations」の録音場面はまるでドキュメンタリーを観ているかのようでした。

アラン: 映画製作時にウェスタンの第3スタジオにマークを訪ねました。まるでタイムマシンのようで、信じられないほど素晴らしかったです。

 

 

―「Good Vibrations」の場面は比類ない素晴らしさでした。本当に気に入りました。

マーク: ええ。私には映画のレコーディング場面が正確かどうかは分かりますが、ギターやドラムキットがどうかはわかりません。1966年のシーンはまるで当時撮られたドキュメンタリーのように撮ることにしていたので、ビル・ポーラッド監督は全てを正確にすることにこだわりました。

 

 

イーストウェスト・スタジオ(以前のウェスタン・スタジオ)が寛大にも映画撮影の許可を出してくれたことは嬉しいですね。スタジオの公式サイトにもそのことを誇って書いてあります。

マーク: そのとおりです。私たちは一週間と半分もスタジオ全体を貸し切りました。

 

 

アラン: 是非聞きたいのですが、みなさんは、新しいリスナーにビーチ・ボーイズに興味を持ってもらうために、どういったことが役立つと思いますか?

 

(たくさんの回答がありました)

 

マーク: 私たちは、『Sunshine Tomorrow』と1968年のセットが、これまでとは違う新しい層に、1967年以前とは違うビーチ・ボーイズの音楽の魅力を伝えられたと思っていますし、それが続けばいいなと思います。『Wild Honey』のステレオ・バージョンのLPと『Sunshine Tomorrow』の売上の多さに驚きました。予想していたよりずっと多かったからです。発売前により多くプレスするためにLPの出荷を抑えていたくらいです。

 

アラン: ビーチ・ボーイズはいろいろな種類の音楽を本当に上手くこなしています。

 

マーク: ビーチ・ボーイズの素晴らしいところは、未完・完成かかわらず多くの素晴らしい未発表曲が残っている点で、そのおかげでこうしたセットもより興味深いものになっているのだと思います。

 

アラン: 私たちがいなくなったずっと後にも、これらの録音は熱心に聴かれ続けます。今や大学でも「ブライアン・ウィルソン」と「ビーチ・ボーイズ」を教えているのです。

 

 

―「ビーチ・ボーイズの音楽」はインディアナ大学で毎年教えられています。

アラン: インディアナ大学のその講座(の生徒)と何度か話したことがあります。素晴らしい人たちでした!

 

 

―今回のQ&Aと、このDiscordのサーバー全般についてどう感じていますか?これからもQ&Aをぜひやりたいと思いますか?

アラン: これはとても良いと思います!これからときどき時間がある時に訪れて、いくつか質問に答えてもいいと思ったくらいです。

マーク: 楽しかったですし、いつかもう一度したいと思います。

 

(終)

*1:1977年初めにブライアンが中心となって製作したビーチ・ボーイズのアルバムで、「Still I Dream Of It」などが収録されましたが、結局発売されず、現在に至るまで未発表のままとなっています

*2:『Love You』期のブライアンの未発表曲で、「学校から帰る途中の女の子に車から声を掛ける」という不審者そのもののブライアンらしい歌詞で知られています

*3:「All I Want To Do」の最後に小さく聞こえる喘ぎ声のことです

*4:こちらのスレッドで引用されているデスパ―の発言のことだと思います

Did Dennis invent the celebrity sex tape with All I Want to Do?

*5:『Holland』についてきたEP『Mt. Vernon And Fairway』の第二弾といったところだと思います

*6:1970年代前半にブライアンがドン・ゴールドバーグという人と録音したとされる「Sweet And Bitter」「Out In The Country」(ブートで広く出回っているのとは別バージョン)「Fading Love Song」の三曲で、2013年に突如Youtubeで公開され話題となりました

"Sweet and Bitter" and "Out In The Country"

*7:1960年代にビーチ・ボーイズの録音を担当したレコーディング・エンジニアで、1967年に至るまで多くのビーチ・ボーイズの録音に携わりました

Chuck Britz - Wikipedia

マーク・リネット&アラン・ボイドとのQ&A@Discord [パート1]

2月11日:一部修正

 

 12月7日に発売された『Wake the World - The Friends Sessions』, 『I Can Hear Music - The 20/20 Sessions』, 『Beach Boys On Tour: 1968』に伴うファンとのQ&Aが日本時間1月30日午前8時からビーチ・ボーイズのDiscordサーバー*1 で開かれました。質問に答えたのはビーチ・ボーイズの編集盤制作に長年携わっているアーカイブ・マネージャーのアラン・ボイド, レコーディング・エンジニアのマーク・リネットの2名。Q&Aは大いに盛り上がって2時間半にわたり、さまざまな新事実が明らかになりました。

 

以下はSmiley Smile Message Board(Discord Q&A with Mark & Alan)に掲載されたQ&Aの書き起こしの日本語訳です。(こなれていない訳で申し訳ありません)

なお、質問の主旨に関係のない部分は省きました。また、かなりの分量があるので、今回は前半のみを掲載し、後半は「パート2」として後日アップする予定です。

 

[Discord Q&A with Mark Linett & Alan Boyd]

 

―未発表音源の発売の継続を支えるために、なにか私たちができることはありませんか?新しくデジタル化された音源や、これまでの著作隣接権対策リリースで漏れた曲(1965年のセッション音源や各曲のアカペラ/インストなど)が逐次追加される、ニール・ヤングがやっているような月額サービスはどうかと、よく考えているのですが…

アラン: キャピトルの考え次第ですね…月額サービスのためには、十分な顧客層があることをキャピトルが把握する必要があります。

マーク: いいアイデアですが、キャピトル/ユニバーサル・レコードの考え次第ですし、利益の見込みがあると判断されるとは思えません…この10年の間、これだけの量を発売できただけでも、本当に運が良かったくらいなんです。

 

 

―将来製作に携わるのが特に楽しみなものは何ですか?

マーク: これからの一連のアルバム…『Sunflower』,『Surf's Up』, 『Carl & The Passions』, 『Holland』などですね。

アラン:  『Sunflower』/『Surf's Up』期の音源の編集に携わることができるかもしれないので、本当に楽しみにしています。実のところ、ブラザー・レコードから出た全部のアルバムが楽しみですね。

 

 

―去年と一昨年のリリースでは、どうして 『Pet Sounds Sessions』のように全曲のアカペラとインストを収録することができなかったのですか? 内部の事情か、それともファンが興味をもたないと判断しているんですか?

アラン: 『Pet Sounds』のときとは違って、徹底的に取り組む時間や余裕がないんです…けれども、できれば全曲のアカペラとインストを収録したいと思っています。特に『Sunflower』ではそうしたいです。

マーク: レーベルが発売する曲数に一定の上限を設けているんです。けれども、ライブ音源はかなりの数収録できているので、将来はもう少し曲数を増やせるかもしれません。ただし、曲を増やせば増やすほど、価格も上がることになります。加えて、将来のCDでの再発の可能性を考えて、一作ごとにCD2枚組を念頭に置いて制作しています。

 

 

―以前『Summer In Paradise』の音源が50年持たないかもしれないのが心配だとアランが言っていましたが、最低でもバックアップが確実に取られているように取り計らったりはしましたか?

アラン: 『Summer In Paradise』の音源にアクセスする権利がないので、無理です。

 

 

―『Wake The World』の最後にある「I'm In Great Shape」の断片について詳しく教えてください。

マーク: デューリー・パークスのアセテート*2(あるレコード業者が入手して1万ドルで売り払い、私たちにはコピーを取らせてくれなかった)からのもので、持ち主が一度だけ私に聞かせてくれたときに、携帯電話で一部を録音したものを、「Child Is Father of the Man」のアセテート音源の最後に収録しました。

アラン: ブライアンが当時編集した「Child Is Father of the Man」のインストは、『SMiLE Sessions』で私たちが収録できなかったものです。(記憶が正しければ、「Tetter Totter Love」かどちらかを収録するかという話になっていたと思います) その後、『Made in California』の限定ボーナス・ディスクに収録することになったのですが、結局それは発売されず…そして、音楽的につながりのある「Little Bird」と一緒に収録することで、ようやく発売することができました。

 

 

―将来『Friends』の本編が今回のセットと同じように新しいミックスで発売される可能性はありますか?アウトテイクのミックスの方が本編より良いというのも、なんだか変な感じがするんです。

マーク: ありがとう…1965年の未発表音源を集めたセットと『Friends』のリミックスについては提案したのですが、実現の可能性がどれだけあるかはわからないです。

 

 

―『Friends』以上に『20/20』もリミックスが必要です。

マーク: 「Cabin Essence」のマルチテープがないので、『20/20』の全曲をリミックスすることはできません。

 

 

―(「Little Bird」のインスト以外に)『Made In California』のボーナス・ディスクには何が入る予定だったのですか?

マーク: 収録予定曲のほとんどは昨年か2014年の『Keep An Eye On Summer』で発売されました。ボーナス・ディスクを付けて売る予定だったのは確かベスト・バイだったと思うのですが、ちょうどその頃そうしたおまけを付ける習慣が廃止されてしまったんです。

 

 

ー『Friends』と『20/20』のセッション音源の中でいちばん驚いたのは何ですか?

アラン: 『Friends』の音源の中では、「Be Here In The Morning Darling」、それに「New Song」の旋律が含まれている「Transcendental Meditation」の未完成バージョンに特に興味を引かれました。『20/20』では、デニスが激しく歌う「All I Want To Do」が素晴らしい発見でした。それと、「The Nearest Faraway Place」の別テイクもとても気に入りました。

マーク: 「All I Want To Do」のマスターテープを発見してから入手するまで8年もかかりました。

 

 

ー 「Oh Yeah」で歌っている子供が誰か調べましたか?「もしかしたらこの人かもしれない」、というような見当はついていますか?

アラン: 日付と題名を除いてメモや記録がないので、全く見当がついていません。

 

 

―SMiLEの曲のステレオ・ミックスが将来さらに発売される可能性はありますか?

アラン: SMiLEの曲であとどれくらいステレオ化できるものがあるか今は思い出せないです。悲しいことに、複数のマルチテープが紛失しています。

 

 

― 2011年の『The SMiLE Sessions』の発売からきっとこの話題を耳にしてきたと思うのですが(最近Spotifyで複数の曲に「2011 SMiLE Version」との表記がついたときも、いくつか推測が出ました)、SMiLEの未ステレオ化曲や、LPのみに収録されたステレオ・ミックス(「Surf's Up」「You're Welcome」)、アカペラ・ミックスやその他前回未収録となった音源が将来発売される可能性はありますか?

 加えて、「Child Is Father Of The Man」のマルチ・テープにボーカルは入っていますか、それとも、2011年バージョンのボーカルは以前のミックスから持ってきたのですか?それと、『SMiLE』製作当時の「Wonderful(Version 1)」のモノ・ミックスには、バック・ボーカルは入っていますか、あるいは、1993年の『Good Vibrations』や2011年バージョンのために新たにミックスされたのですか?

マーク: 「Wonderful」と「My Only Sunshine」のマルチ・テープは紛失していて、おそらく「Cabin Essence」と同じリールに入っているのではないかと思います。

アラン: 『SMiLE』のミックスの多くがモノラルなのは、4トラック・マスターからボーカルが消される前に作られた初期ミックスからボーカルを取っているからです。「Wonderful」のブライアンのボーカルがそのよい例です… 

「Wonderful」のバック・ボーカルの一部は、当時の4トラック・マスターから作られたと思われる8トラックのコピーから取りました。「Child Is Father of The Man」のコーラスの一部もその8トラックに残っていました。(『The SMiLE Sessions』の発売まで)知られていなかったパートを含む別のコーラスは、現存しているアセテート盤から取りました。

 

 

―それでは、「Child Is Father Of The Man」の初めのコーラスはアカペラで残っているのですか?

アラン:そう思います。

 

 

―LPのみ収録されている『SMiLE』のステレオ・ミックスをデジタルで発売すれば、きっとみんな喜ぶと思います。

マーク: その通りですね、覚えておきます…当時その話が実際に出た覚えもあります…CDやレコードではいつでもそうですが、使える容量をどう最大限に使うかが大事なんですね。

 

 

―『Friends』『20/20』以降のアルバムの未発表曲、特に評価の高くないアルバムの曲は、将来どのように発売されると考えていますか?例えば、『The Beach Boys』のアウトテイクは2035年まで、『That's What God Made The Radio』は2062年まで待つことになるのでしょうか?

マーク: 50年前の未発表曲が優先なので、後の時代のアルバムについては近いうちに取り掛かることはないと思いますが、将来「出せるものは発売しよう」という方針になることもあるかもしれません。

アラン: 将来のリリースに関して、キャピトルがどう判断するかを予測するのは難しいです。イギリス・ヨーロッパの新しい著作権法の長所は、パブリック・ドメイン化を防ぐために、レコード会社が未発表音源の発売に積極的になることをある意味強制しているところですね。個人的には、『15 Big Ones』~『M.I.U. Album』期、1976-77年を扱った『Brian's Back』セットを本当にやりたいです。

私の推測では、現在のところ最優先なのは、未発表曲の著作隣接権切れが迫っている『Sunflower』から『Holland』だと思います。『Love You』と『Adult Child』はたぶんその後になりますね。

 

 

―将来「The Flame」(ブロンディ・チャップリンとリッキー・ファタ―がBB加入前に所属していたグループ)の2枚目のアルバム、デニスが(1970年代初めに製作した)ソロアルバム用の音源、それにブライアンがプロデュースしたFred Vailのカントリー・アルバムといった、ビーチ・ボーイズ外での作品が発売される可能性はありますか。

(後ほど回答されました)

 

 

―日本では、『The Big Beat 1963』がストリーミング・購入ともに未発売なのですが、将来発売される可能性はありますか?

マーク: 『The Big Beat 1963』については、キャピトルに尋ねておきます。『The Beach Boys On Tour: 1968』がようやくヨーロッパで発売されたと思います。

 

 

著作権対策リリースに加えて、当時のプロモーション・ビデオやライブ映像が発売される可能性はありますか?

―『Brian Wilson Presents SMiLE』のLPでの再発はありますか?もしあったら、私は絶対買います。

マーク: 『The Big Beat 1963』が日本で発売されていないことは知りませんでした。『Brian Wilson Presents SMiLE』はそんなに見つけにくくなっているのですか?

ビデオに関しては、制作費用に見合う十分な市場がない*3ので、シンクロ権*4の取得の問題で困難です。

 

 

―私の場合、「Brian Wilson Presents SMiLE」のLPに200ドルかかりました。

マーク: 調べておきます。

 

 

―1974年にカリブー・スタジオで録音された曲はどれくらい残っていますか?―曲名を挙げると、「Don't Let Me Go」「Earthquake Time」「Our Life, Our Love, Our Land」「Honeycomb」「You're Riding High On The Music」「Brian's Tune (Rollin' Up To Heaven)」、それと悪名高い「Battle Hymn Of The Republic」です。

アラン:1974に録音された曲の一部は現存していて、ブートで出回っているものもありますが、それと同じくらい見つかっていない曲があります。「Battle Hymn Of The Republic」「Honeycomb」「Brian's Tune」はありますが、他に挙げられた曲は見つかっていないです。

 

 

―スティーブン・デスパ―が持っていると主張している、カールがリードを取る「Sail On, Sailor」の初期バージョンについてなのですが、実在の証拠は見つかっていますか?同じく、「Sail On, Sailor」のブライアンとヴァン・ダイク・パークスのデモは残っていますか?

アラン: カールがリードを取る「Sail On, Sailor」の初期バージョンは見つかっていません。私たちが持っているのは、16トラックのセッション・テープとブロンディが歌う最終バージョンだけです。ブライアンとヴァン・ダイクの「Sail On, Sailor」の作曲風景を収めたとされるカセット・テープも一度も実際に聞いたことがないですし、テープ保管庫にもないです。

 

 

マーク: 皆さんに質問があります。(『Brian Wilson Presents SMiLE』のLP以外に)再発の必要があるブライアンのソロ作品はありますか?

 

―『Sweet Insanity』を発売してほしいです。(他にも様々な提案が出ました)

 

マーク: 『Sweet Insanity』の発売のハードルはかなり高いです。『Gettin' In Over My Head』がデジタルで販売されていないことは知りませんでした。

 

 

―1995年のセッションで録音された「Dancin' The Night Away」を気に入っていますが、ブリッジ部分のカールのリード以外のボーカルは録音されたのですか?それと、マイクは曲全体の歌詞を書きましたか?

マーク: ブリッジ以外のボーカルは録音されていません。完全に歌詞が書かれたかどうかはわからないです。

 

 

―1968年のセットに収録したかったけれども、収まりきらなかった、あるいは却下された曲はありますか?

マーク:  なかったと思います。別ミックスのファンのリクエストは全部記録しておいたので、将来どこかで収録できたらと思っています。

 

 

―1968年のセットをブライアンが聞いて、発売の許可を出したのではないかと思うのですが、特定の曲に対するブライアンの反応について教えてください?

アラン: 今回ではないのですが、『Hawthorne, CA』を製作した時に、ブライアンの考えを聞くために曲を持っていきました。「A Time To Live In Dreams」を聞かせると、ブライアンが目に見えて感動しているのがわかりました―それまで聞いたことがなかったそうです。

 

 

―デューリー・パークスのアセテート盤の曲目について教えてください。

マーク: 他には何が収録されていたのか覚えていないのですが、(今回収録した以外にも)知られていない音源がありました。持ち主が他の人にも全部聞かせてくれたらと思います。

 

 

―デューリー・パークスのアセテート盤の持ち主が、1966年後半に録音されたと思われる「Children Were Raised」(「Heroes and Villains」の一部分)のバック・トラックに言及したと読んだことがあるのですが、それを聞いた覚えはありますか?

マーク: 全然思い出せないです。聞いたことのない短いパートがいくつかがあったことしか覚えていないです。

アラン: 「Bicycle Rider」の別バージョンが入っていたのは覚えています…けれども、残念なことに、全部を聴いたことは一度もないです。

 

 

―「Is It True What They Say About Dixie」はどうやって見つけたのですか?

アラン: 何年か前にアーカイブのテープの保存作業をしていたときに、たまたま見つけました。いい意味でとても驚きました。今回ようやく収録できて嬉しいです。

マーク: 長年テープのアーカイブ化作業をしてきましたが、その途中で「Dixie」や「Surf's Up」の1967年バージョンなど、ラベルには書かれていない曲が入っているのが見つかりました。もしそうした作業をしていなかったら、きっと見つけられなかったと思います。

 

 

―外部のレーベルが、デジタル限定リリースをCDやLPで発売する権利を取得するような動きはないのですか?もしあったら、キャピトルは許可を出しますか?

アラン:確か複数のコレクター向けのレーベルが興味を示していたのですが、きっと権利取得時にキャピトルに払う金額がかなり高かったのではないかと思います。

 

 

―1995年のセッションについての質問なのですが、何が原因で、新作ではなく、『Stars & Stripes Vol.1』を制作することになったのですか?カールが怒って録音を放棄したのが原因だとする噂がありますが、もっと事情があるように思えるのです。それに、「Dancin' The Night Away」「You're Still A Mystery」「Soul Searchin'」以外に録音された曲はありますか?

マーク: 「Dancin' The Night Away」は私のスタジオでアンディ・ペイリーとブライアンが録音した新曲の一つとして録音されました。「You're Still A Mystery」と「Soul Searchin'」はその後にウェスタン・スタジオで録音されましたが、『Made In California』に収録した「Soul Searchin'」は、ブライアンが元々録音したバック・トラックに、後になって収録されたビーチ・ボーイズのボーカルを加えたものです。

アラン: 1995年のセッションからは、ドン・ウォズらと録音したバック・トラックが他にもいくつかありますが、ボーカルが録音されたのはその三曲だけです。

 

 

―将来『In Concert』の1枚組の初期バージョンがリリースされる可能性はありますか?

マーク: 未発表音源がたくさんあるので、『In Concert』のボックス・セットの発売は将来どこかの時点で可能性があると思います。

アラン: それに、1973年初めに却下された『In Concert』の1枚組バージョンが複数存在すると思います。「Wouldn't It Be Nice」や「Let The Wind Blow」など一部の曲は1973年末に発売された2枚組にそのまま収録されました。

 

 

―ジャスパー・デイリー*5の曲で、(「Tetter Totter Love」以外に)発売できるものは残っていますか?

マーク: ジャスパー・デイリーの残りの曲は見つかっていません。

 

 

―『Inside Pop』*6のフィルムの状態について知っていますか?なくなってしまったのか、あるいはどこかに残っている可能性はありますか?Oppenheimer Familey Archivesに残っているかもしれないという話を以前聞いたのですが、それからまったく音沙汰がないです。

アラン: 1998年に『Endless Harmony』の作業をしている時に探しましたが、見つかりませんでした。もしかすると、ずっと前にCBSが保管庫のスペース確保のために捨ててしまったのかもしれません。また、以前誰かがOppenheimerにそのフィルムについて問い合わせましたが、誰もそのフィルムを持っていなかったようです。

 

 

―『Friends』『20/20』で好きな曲は何ですか?

マーク: 1つだけ…「I Went To Sleep」のアカペラ、それとと「Little Bird」の2つのミックス…3つ言ってしまいましたね。「Little Bird」のバック・トラックは『Made In California』のボーナス・ディスクに収録される予定でした。

 

―私もとても気に入っています。「I Went To Sleep」のアカペラは大のお気に入りの曲の一つです。

 

マーク: そんな理由もあって、『Hawthorne, CA』にも収録した「I Went To Sleep」のアカペラをもう一度入れました。

アラン: アカペラの「Little Bird」はこれまででいちばん気に入った曲の一つです。

 

 

―私たちはAmerican Springの大ファンで、他のサイドプロジェクト(CelebrationやCalifornia Music)はそれほど好きではないですが、これらを扱ったリリースの計画はありますか?

アラン: American Springの新ミックスなどを含めた再発はぜひしたいですが、レーベルに売り込みにくい作品でもあります。The Flameはもう一度再評価の機会を与えられるべきですし、ブラザー・レコードでの2枚目のアルバムのテープは、カールとスティーブン・デスパ―による最終ミックスを含めて全部残っています。

 

(パート2に続く)

*1:Discordはゲーマー向けのチャットアプリですが、BB専用のサーバー(チャットルーム)もあり、活発に議論が交わされています。リンクはサーバーのオーナーの意向により貼れないので、Q&Aのソースを確認されたい方は、直接私にお尋ねください

Wata (@coolcoolwata) | Twitter

*2:ヴァン・ダイク・パークスの元妻が所有していたもので、2013年に売り出されました:

https://recordmecca.com/item-archives/beach-boys-8-original-smile-acetates-from-the-collection-of-van-dyke-parks/

*3:2月11日修正:原文では「FS outlet」となっていましたが、「For sale outlet」、つまり販路がないということではないかとご教示いただきました。

*4:シンクロ権についてはこちらに解説があります:

第9回:映像に海外の楽曲を付けてYouTubeにアップするとき気をつけなきゃいけない「シンクロ権」ってなんですか? | 音楽著作権ベーシック講座 | Rittor Music Magazine Web

*5:写真家で、『SMiLE』セッション末期の1967年春頃にブライアンのプロデュースで三曲を録音したとされています。「Tetter Totter Love」が2011年の『The SMiLE Sessions』に収録されましたが、残りの2曲ー「When I Get Mad (I Just Play My Drums」と「Crack The Whip」―は収録されませんでした。略伝(英語)はこちら:

http://www.angelfire.com/mn/smileshop/historyjasper.html

*6:1967年に放映された、デヴィッド・オッペンハイム監督のドキュメンタリーで、ブライアンが「Surf's Up」を弾き語りするシーン(1966年12月17日収録)が収められています。他にも、ビーチ・ボーイズが歌う「You're Welcome」「Cabin Essence」「Wonderful」が同月15日に収録されましたが、未だ見つかっていません。

Inside Pop: The Rock Revolution - Wikipedia